ダークマター、ダークエネルギーの解明を目指して(科学絵本)
都会からはなれ、夜空を見上げてみよう。
たくさんの星が輝(かがや)いているのが見えるでしょう。
黄色の星、赤い星、青い星。
星が集まり銀河(ぎんが)となり、銀河が集まり銀河団となっています。
私たちのいる地球も天の川(あまのがわ)銀河の中にいて、周りの星たちと引き合い、特に太陽に引っ張られ、太陽の周りを回っています。
すべての質量のあるものは周りのものを引き寄せる力、重力を持っています。
星も含め、物はどれでも力を受けて移動(加速)するので、
物の動きを見れば、その物に働いている力がどうなっているのか、がわかります。
宇宙という大きな世界では、力といえば重力です。
そのため、星の動きを見ると、その星に働いている重力がわかります。
実際、星や銀河の動きを見てみると、私たちが見ることができる星や銀河などの物から生み出される重力よりも大きな力が働いていることが分かっており、目に見えないけど質量があり重力を働かせているものが存在していると考えられています。
それがダークマターです。
今、ダークマターの宇宙分布の解明が進んでいます。
生徒:「先生!重力ってどうして働くんですか?
どうやって見えないダークマターを探すんですか?」
先生:「物と物が引き合う力、万有引力(ばんゆういんりょく)が、月などの宇宙にまで働いていて、距離が遠くなると弱くなっていくことを発見したのが、あのニュートンです。」
先生:「そして、あのアインシュタインの一般相対性理論(いっぱんそうたいせいりろん)によると、質量がある物体は、周りの時空(じくう)を歪め(ゆがめ)、その時空の歪みに沿って物が移動するのが、万有引力、重力が働く仕組みとなっているんです。
だから、地面に向かって落ちるリンゴは、地球によって歪んだ時空に沿ってリンゴが移動した、ということです。」
先生:「歪んだ時空に沿って移動するのは物だけでなく、光もです。なので、遠くの銀河から出た光は、地球と銀河の間にある物による時空の歪みに沿って進むので、歪んだ銀河の姿を地球ではみることになります。
その歪み具合をみれば、どこにどのくらい時空を歪ませる質量があるのかがわかります。私たちの目に見えているものから想定される歪み具合以上に歪んでいたら、そこにダークマターがある、ということになるんです。」
生徒:「じゃあ、宇宙にはたくさん星があるから、時空は歪みまくり、ってことですか?
星が集まったところの方がたくさん時空が歪んでますよね?
そしたら周りにある星もどんどんその歪みに落ちてって、どんどん星が集まってるところに集合していきませんか?
それなのに何で宇宙は膨張(ぼうちょう)しているのですか?」
先生:「そこが謎なのです!質問の通り、ダークマターや星、銀河による時空の歪みによって、周りのものは引きつけられます。
しかし、宇宙の膨張は加速していることが観測でわかっています。
そこで、時空の歪みによる重力とは逆に、物と物を引き離す力を生み出しているダークエネルギーがあるとして説明が試みられています。」
先生:「なのでこの宇宙は、ダークマターによって、物が集まり星ができ、銀河ができ、銀河団ができ、という成長と同時に、ダークエネルギーによって物と物が引き離されて、という両方のバランスの中で今まで成長してきています。
ダークマター、ダークエネルギーが何物で、どのような関係なのか、が整理できると、この宇宙がどう成長してきたか、が説明できるのです。」
生徒:「先生、宇宙が膨張している部分は一体どうなってるんですか?宇宙が広がって新しくできた空間には何があるの?
そもそも空間ってなんですか?
どんな物もある空間に存在してますけど、その、物を存在させておける空間そのものは何ものなんですか?
あと、リンゴは時空の歪みに沿って進んでいるんですよね。その歪みが、空間的には地面の方向に、時間的には未来の方向にへこんでいるから、時間とともに、地面に落ちていっている、と。ってことは、時間が過去に進む方向へ転がり落ちるようなへこみがあれば、過去に向かってリンゴが進んでいくってことですか?
あれ、でも僕たち自身が過去の方向へ進んでいかないとそれは観測できない?
あれ?そもそも未来へは行けるけど過去には行けない、っていう話を聞いたことがあるけど、、、」
先生:「はい、落ち着いてください。たくさん不思議なことがありますよね。
空間とは何か、時間とは何か。ここまでくると哲学(てつがく)の世界にもなってきますね。
ボーアという有名な物理学者の言葉で次のようなものがあります。
『There is no quantum world. There is only an abstract quantum physical description. It is wrong to think that the task of physics is to find out how nature is. Physics concerns what we can say about nature.』
(筆者による雑な訳:「量子の世界というものはありません。量子物理学による抽象的な表現方法があるだけなのです。物理学の仕事は、自然がどのようになっているのかを解き明かすことだと考えては行けません。物理学は自然をどう表現できるか、という学問なのです。」)
残念なことに、物理学では、空間や時間だけに限らず、現在自然を上手く表現できている素粒子理論なども含め、それが本当にこの世の真実なのかどうか、を明らかにすることはできません。
ただし、逆に言えば、真実を表現する方法は無数にある可能性があります。今までの複雑で難しい、この世を表現する方法を理解できていなくても、誰でも、全く新しい、この世の表現方法を考え出していいのです。」
生徒:「わかりました!じゃあ僕、空間とか時間とか、それが何ものなのかも含めて一気に説明できるような表現方法を考えてみたいです!」
先生:「いいですね!世の中をあっと驚かせましょう!」
おしまい