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新たなリチウム超イオン伝導材料の開発(簡易版)

1.(リチウムイオン)電池とは

 人類は電気を使った社会を営んできました。そして現在は、電気を使う製品の小型が進み、持ち運べる時代になっています。この時代の到来に必要不可欠だったのが日本人が発明したリチウムイオン電池です。リチウムイオン電池の説明の前に、まず電池とは何か、という話をしましょう。

 現在多くの機器が、電子の流れや、そのやりとりによって動作したり、情報を保持したりしています。この電子の流れなどを生んでいるのが電圧であり、電圧を生んでいるのが電池です。

 電圧とは、電子の世界における標高差(傾斜)のようなものです。標高が高い方から低い方へ、まるで川の水のように電子は流れていきます。よって言い換えれば、電池はある2点に電子にとっての標高差を生む装置、というわけです。

 それでは、具体的にリチウムイオン電池を例に見てみましょう。

 代表的なリチウムイオン電池では、炭素とリチウムがくっ付いたものと、酸化したコバルトとリチウムがくっ付いたものを、それぞれリチウムイオンが溶け込める液体につけて繋ぎます。炭素がある方が、電子にとって標高が高く、コバルトのある方が電子にとって標高が低いので、その間で電子が流れることになります。そして、充電するときは逆向きに傾斜を無理やりつけて、電子を炭素側に戻しておきます。

 このように電子をやりくりしますが、その電子の源がリチウムです。リチウムが炭素側とコバルト側を液体を通して行ったり来たりしながら、電子を受け取ったり、電子を放出したりしています。

2.リチウムイオン電池の問題点

 リチウムイオン電池が新たな時代を切り開いた鍵となったポイントは、充電が何度もでき、他の電池より小型化が可能で、電圧も高いという点です。

​ しかし、リチウムイオン電池は、内部で発火しやすい有機溶媒を使用しており、液漏れや発火の危険性があり、電動自動車などの大型の装置に使うためには、より安全性があり、長時間利用が可能な次世代の電池が必要となります。

 次世代電池として注目を浴びているのが、全固体電池です。リチウムイオン電池で言えば、電子を受け取ったり、放出したりするために行ったり来たりしていたリチウムの通り道となっていた液体部分を固体にすることができれば、安全性があり、なおかつ炭素よりも急な傾斜(高電圧)を作れるリチウムそのものを片方に使える(長寿命となる)ことになります。

 しかし、固体の中をリチウムイオンが行ったり来たりする速度(リチウムイオン伝導率)が遅いと高性能の電池とはなりません。

 今回紹介している研究成果では、そのリチウムイオン伝導率が実用化されている液体の場合に匹敵する固体材料の開発に成功しました。成功の鍵となったのは、リチウムイオンを伝導していく錯イオンの不規則性です。錯イオンが不規則に並んだ方が、リチウムイオン伝導率が高いことは以前から分かっていましたが、その不規則性を室温で維持することは今まで困難でした。しかし、本研究では、室温でも高い不規則性を維持した材料の開発に成功したのです。固体のリチウム超イオン伝導材料が実現したことにより、上記の通り、安全性があり、長寿命の電池の実現に近づきました。

 

3.なぜ電子

 どんどん身近で欠かせないものとなっている電池。電池によって、あらゆる装置の血液と言える電子が流れます。なぜ、装置の血液は電子となったのでしょうか。いや、装置の血液として電子以外も活用できるのでしょうか。

 私たちに生命の多くは活動のエネルギーとしてアデノシン三リン酸(ATP)と呼ばれるものを使っています。このATPがリン酸を放出してアデノシン二リン酸(ADP)になったり、ADPがリン酸と結合してATPに戻ったり、とリン酸のやりとりの中でエネルギーを得ています。

 ATPを用いた機械は作れるのでしょうか。​。。。と妄想はここまで。

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