記者純一が行く ​第3話「現実は何か」 

記者純一が行く。第3話現実は何か
新人記者の純一。科学のことはよくわからないけど、科学部に配属されている。今日は上司とオフィスにて雑談ちゅう。いま、ドレスの色が、白と金なのか、青と黒なのか、っていうのが話題みたいですね。課長はどっちに見えますか?あ〜、話題のやつね。私は白と金だね。
私は青と黒ですね。これって本当はどっちなんでしょうか。そうだ、純一くん。これについて取材に行ってきてくれ!承知しました!投稿者に本当の色を見せてもらって、真実を確かめに行ってきます!
違う違う!ドレスの写真の投稿者じゃなくて、脳科学者のところに取材に行ってきて!そっちですか。承知しました・そして、純一は、このドレスの色を話題について、脳科学者に取材に行くことになりました。
取材先の研究室に到着。失礼します。取材に参りました。純一と申します。あ〜、だめか〜。ちょっと待ってください
今日はよろしくお願いします。今は何をされてたんですか?どうぞ、座ってください。今は、脳がどこまでだまされるか、実験してたの。
だます、ですか。脳は簡単にだまされるんですか?私が今やってたのは、VRで扉が閉じている実験室内の映像を見ていたら、扉が開く音や、来客の声を、脳がノイズとして処理するか、という実験よ。でもこれは失敗。来客に気づいちゃったわ。
気づいてもらわなきゃ困りますよ!では、脳は騙されにくいってことですね?今回のは、来客があることを事前に知っていたから、失敗したんだと思うの。脳は、自分の推測の方向に騙されやすいのよ。というと?例えば電話よ。
電話では、数十億の事前に用意された声の素から、本人に近い声が合成されて聞こえてきてるの。だから本当は本人の声じゃないの。でも、通話相手を知った上で聴くと、違いはあまり感じないでしょ?これは相手の声が聞こえてくると脳が推測しているから、騙されているの。そんな身近な例が!
他にもね、例えばこの壁の模様を見て。何に見える?何にも見えないですね。
じゃあ、この写真を見てみて。不思議な模様の羽を持った蝶の写真よ。
どう、改めて壁の模様を見たら、チョウに見えない?見えるようになりました!
実際の写真を見る前と後で、模様の見え方が変わったけど、模様から目に入る光の信号は何も変わってない。変わったのは、見る人の脳内での推測なの。結局、現実は脳が作り出してるのよ。なるほど。じゃあ人それぞれ脳の推測が違えば、現実の見え方も違うんですね!ありがとうございました。そういうこと!
そして、純一は取材から戻っていきました。すごい遠い取材先だったけど、面白い話だったな〜。あ!肝心のドレスのことを聞くの忘れてた!ドレスの色問題の原因は結局わからないや・・どう記事にしよう・・真実は、白と金なのかな、青と黒なのかな、やっぱそこがきになるよなぁ。真実は、人それぞれの脳の推測を経て、人それぞれの真実となる。この答えは、純一の中に既にあるけど、純一はドレス問題の原因だとは気づかないのでした。おしまい。

​(参考)日経サイエンス2019年12月号