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高温超伝導研究に光明(簡易版)

1.超伝導とは

 超伝導は1911年に発見されました。一部の金属や化合物で、温度を非常に低音にした場合に、電気抵抗が急激にゼロになる現象です。この現象は、医療などに用いられるMRIなどですでに利用されており、私たちの生活に重要な現象となっています。また、リニアモーターカーの実現にも使われていますし、例えば電気抵抗がゼロの電線を実現できれば、世界のエネルギー消費量をかなりの量削減できることになる、など、まだまだ私たちの世界を変え得る夢の物理現象です。

2.問題点

 しかし、超伝導現象を実現するには、液体ヘリウムや液体窒素を用いて非常に低温(約ー270℃〜ー200℃)まで物質の温度を下げる必要があります。​特に、ー200℃くらいで超伝導現象を起こすものは、「高温超伝導物質」と呼ばれます。ー270℃に比べるとかなり高温なのです。

 ー270℃まで低音にする場合に必要である液体ヘリウム。実は液体ヘリウムを入手するのにかなりのコストがかかります。日本では海外から輸入する必要があるのですが、中国での需要が高まっていること、アメリカの輸出がストップしたこと、カタールの輸出量が増えないこと、が原因でヘリウムの価格はどんどん上がっているのです。このままでは、超伝導物質を用いた装置の運用が難しくなってしまいます。

 一方で、ー200℃で超伝導を起こす高温超伝導物質は液体窒素で十分に活用できます。なので、今、高温超伝導の研究が重要なのです。

3.今回の成果

 ー270℃付近で超伝導を起こす理論はBCS理論と呼ばれる理論で解明されています。しかし、高温超伝導の理論的解明はまだされていません。この高温超伝導の原理を知ることが、今後の高温超伝導活用に重要となってきます。

 今回紹介する成果は、その高温超伝導物質である銅酸化物に光を当てて、光電効果と呼ばれる効果によって電子を飛び出させ、その物質内で電子がどのように振舞っているのかを調べることに成功した、というものです。これは、高温超伝導物質内での電子の振る舞いを理論的に説明する助けとなり、高温超伝導研究に光明がさしたのです。

4.おまけ(BCS理論のさわりとヘリウム資源について)

 超伝導現象を説明する理論としてBCS理論があります。この理論をごくごく簡単に説明してみます。

 まず超伝導現象=電気抵抗ゼロの状態とは、物質中の電子が一様に綺麗に揃っている状態です。乱雑な状態だと物質内を電子が流れる時に抵抗が発生します。

 しかし、電子は一様に綺麗に揃うことはできないとされています。(電子がフェルミ粒子と呼ばれるタイプであることが原因で、そこらへんは詳細版で。)そこで、電子が二つでペアになり、一つのかたまりになっていると考えると、そのかたまりは一様に綺麗に揃うことができるのです。(かたまりになるとボーズ粒子と呼ばれるタイプになります。これも詳細版で。)この電子のペア、電気的には反発し合うはずですが、ペアを作るだけの引力が働いていないといけません。BCS理論において引力の原因として挙げられているのが、電子の格子構造です。(ここも難しいので詳細版で。)

 すなわち、温度が冷えてくると、なんらかの電子間の引力が働き、電子のペアができ、それが一様に綺麗に並ぶので、超伝導現象が起きる、ということです。このペアができたす温度がBCS理論では高温超伝導を説明できる温度ではないため、他の理論が現在必要になっているのです。

 また、高温超伝導物質の研究と並行して、ヘリウム資源の問題も解決しなければならない重要な問題です。ヘリウムは天然ガスを取り出す時に副産物として出てくる形で産出されます。宇宙では2番目に多い元素であるにも関わらず、地球上では極わずかしかありません。というのも、水素とヘリウムが恒星のエネルギー源であり、その恒星が水素とヘリウムを使い果たした寿命の末に爆発し、飛び散った重い元素によって作られているであろう惑星である地球なので、ヘリウムが多いことはないでしょう。

​ 今後各国によるへリウム資源の争奪戦が始まるかもしれません。噂では、月にはヘリウムが眠っているだとか。月の開発の主導権争いはもしかしたらヘリウム資源の確保のために重要になってくるかもしれません。

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