ダークマター、ダークエネルギーの解明を目指して(簡易版)
1.ダークマター、ダークエネルギーとは
ダークマター(暗黒物質)、ダークエネルギー(暗黒エネルギー)というものをご存知でしょうか。
私たちのいる宇宙には、私たちの目に見えるものだけでは説明できず、目に見えないものの存在を仮定しないと説明できないものがあります。
その一つは、銀河団における重力の様子です。銀河団内の銀河の動きが、目に見えているものの質量から計算される重力よりも大きな重力が働いているような動きをしているのです。そこで、目には見えないし、他のものともほとんど相互作用をしないが、質量はあって重力を発生させている物質(=ダークマター)が存在している、と仮定することで説明を試みているのです。
また、宇宙は膨張していることが観測でわかっていますが、宇宙内の物質による重力によって、膨張速度は減速しているのでは、と予測されていましたが、実際は膨張は加速していました。そこで、重力とは反対に膨張速度を加速させるような未知なるエネルギー(=ダークエネルギー)が存在している、と仮定することで説明を試みています。
2.重力レンズ歪み効果
今回紹介する成果では、すばる望遠鏡を用いてダークマターの分布の精密測定を行うことが出来ました。これは、ダークマターによる重力レンズ歪み効果を観測することで得られた成果です。重力レンズ歪み効果とは、光の軌道が重力によって曲げられる現象のことです。銀河団や銀河の大きい重力が、その背後にある銀河と地球の間でレンズのような役割をし、歪んだ光が地球で観測されるのです。
この歪み具合を観測することで、そのレンズの役割を果たしている銀河団や銀河の重力の大きさや分布がわかり、そこからダークマターの分布がわかる、ということです。
3.宇宙の構造
ダークマターは目には見えないけれども、重力の要因としては大きな役割を担ってます。初期の宇宙において、このダークマターが多くあった場所に、その重力によって物が集まり、星ができ、さらに重力が増え、銀河、銀河団ができる、というように、ダークマターの分布が宇宙の構造形成に重要な役割を担っているのです。そのため、ダークマターの分布が分かることは、宇宙の構造がどうできたか、の解明にもつながるのです。
4.ダークエネルギーとの関係
ダークマターは重力を発生させ、物を引きつけますが、ダークエネルギーは宇宙の加速膨張を説明するために登場したものなので、逆に物と物を引き離して行きます。この二つの関係で宇宙の今の構造があり、また今後の宇宙の構造、膨張が決まるため、これらの正体、どのように力が働くのか、などの解明は宇宙の成り立ちと未来を解き明かす鍵になります。
5.他の可能性
すばる望遠鏡による観測は現在行われている最中ですが、その一部の結果から求めたダークマターの分布は、Plank衛星による予測と少しだけ違いが見られます。これがただの統計的な差異で、データ数を増やせば埋まる差なのかもしれませんが、もしかすると、今まで前提としていた一般相対性理論や宇宙の模型を見直す必要があるのか、という大きな問題につながるかもしれません。
6.重力、力とは
そもそも重力とはなんでしょうか。力とはなんでしょうか。物が動く(加速する)と力が働いている、と私たちは認識します。物が動くとはなんでしょうか。場所の移動です。では場所とはなんでしょうか。この空気が存在している空間は何なんでしょうか。また、移動には時間を伴います。時間とは何でしょうか。
宇宙のことが分かれば、空間や時間のこともわかるのでしょうか。みなさんはどう思いますか?