電子とは
1.電子との出会い
今では原子を構成している要素として知られる電子。電子を小さな粒子として私たち人類が認識するより前から、私たち人類は電子を扱っていました。要するに、私たち人類は電子と知らずに電気を扱っていました。
初めはプラスの電気が流れているのが電流だと考えられていましたが、真空放電の実験により、マイナスの電気を帯びた粒子が電流の正体であることを人類が知ることとなりました。この粒子の発見が電子との出会いです。
具体的には、真空放電の実験では、真空中を陰極(電流が戻ってくる側)から直線上で何かが出ていること(陰極線)が目で見える形で確認され、これが磁気的な力で曲がるという事実から、その曲がる方向からマイナスの電気を帯びた粒子が出ている、ということがわかりました。
2.電子はどこにあるのか
この実験以降、電子と名付けた粒子が、どの原子にも同じように存在していることがわかりました。金属の原子にもあるし、空気中の窒素や酸素分子にもあるし、水分子にもあるし、体を構成する物質全てに電子は存在しています。では、そこで電子は何をしているのでしょうか。
3.物質中に電子が存在しない世界だったらどうなったか
電子が電流の正体です。電子が存在しなければどの物質にも電流は流れないことになり、今の電子機器を使った便利な社会はありません。
また、原子は電子によるマイナスの電気を原子の中心にある陽子がプラスの電気で打ち消し、電気的に中性の状態です。そこで電子が存在しないと、全ての原子は電気的にプラスになり、反発し合い、分子や化合物、例えば酸素や水は存在しなかったでしょう。全ての分子は誕生せず私たちも生まれていないでしょう。
電子は私たち人類のみならず、全ての物質にとってなくてはならないものなのです。
では、このようになくてはならない電子は物質中でどのような状態でいるのでしょうか。
原子核の周りをぐるぐる何重にも電子が存在している様子を中学校の理科では習うでしょう。例えば水素原子は電子が1個、ヘリウム原子は電子が2個で、2個とも同じ円周上にいます。リチウム原子では、2個は内側の円周上に存在し、1個がその外側の円周上に存在。ベリリウム原子は内側に2個、外側に2個、、、、といった感じです。
4.電子はどういう状態で物質の中にいるのか
この内側、外側、という感じで、中心から徐々に離れていく円周は、電子のエネルギーを表しています。すなわち、水素やヘリウムは一番中心に近い円=一番エネルギーが低い電子のクラスにしか電子はいません。リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ネオンは一番エネルギーが低いところに二つ電子を入れた状態で、その次にエネルギーの高いクラスに電子が存在しています。
このように、電子は原子の中で、いろいろなエネルギーの状態で存在しています。また、それぞれの円周上を回転しているイメージを持っている人がいるかもしれませんが、そうではなくて、円周上のどこかにいる、又はボワっと円状の雲のように存在している、というイメージが正しいと思います。
私たちの生活においては、力は重力と電磁相互作用と呼ばれる電気的な力と磁気的な力以外は意識しないでしょう。電子は質量が小さいため、重力という観点ではあまり重要ではありません。しかし、電気的な力、磁気的な力で支配されている世界では、電子は電気を帯びた粒子であるため、大きな役割を担っています。
原子の一番外側=一番エネルギーが高い状態にある電子は、エネルギーが高いために原子からも飛び出していきやすく、すなわち、周りの原子と関わりを持つのは、一番外側にある電子です。そのため、原子が周りの原子とどういう関係を築くのか=どういう電気的な力、磁気的な力を働かせあうのかは、一番外側にある電子の数によって変わってくるので、その外側の電子の数=価電子数によって、原子の性質が分類できることが知られています。
5.結局電子はなにものか
例えば、カルシウムの価電子数は2(一番外側のエネルギーが高い円周上には電子が2個)です。そんなカルシウムは人間の体に必須の原子で、体内によく吸収されます。一方で、ストロンチウムはカルシウムよりももう一周外側まで電子が存在して、そこに2個の電子が存在している(価電子数2)放射性物質としての性質もある原子です。このストロンチウムを摂取すると、体内に吸収するためのシステム(電気的な力によって動く)では、カルシウムと同じ価電子数2のストロンチウムのこともよく吸収してしまい、カルシウムが収まるべきところに代りに収まってしまいます。
このように、電子は物質(原子)の性質を特徴付ける重要な要素となっているのです。
さて、以上の説明を理解した上で改めて電子とはなにものなのか、と問いたい場合は、電子は誰が作り出したのか、というようなことに興味があるのかもしれません。
それは誰も答えにたどり着いていない問いであり、多くの歴史上の賢者の考えや現代までの研究者の研究成果を学び、人類のバトンを受け取れば、あなたが新たな知の大地へ旗を立てることができるかもしれません。新たな大地に旗を立てることができなくても、未来の人類へさらにバトンを引き継ぎ、新たな知(地)への道に名を刻む、というのも良いかもしれません。